未だ本能寺にあり
【小説】未だ本能寺にあり(193) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(71)【夏音譚(なつねたん)】 これにて私の話は終わりとなります。この後……でございますか。正直、当ては何もありません。郷(さと)に戻ったとしても縁者はいませんので。
【小説】未だ本能寺にあり(192) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(70)【夏音譚(なつねたん)】 宗念(そうねん)様は時々相槌(あいづち)を打つだけで、じっと耳を傾けて下さいましたが、狩野又九郎(かのうまたくろう)様の名が出たところで、「何と。
【小説】未だ本能寺にあり(191) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(69)【夏音譚(なつねたん)】 そもそも東門辺りの明智兵は存外少なく感じました。
【小説】未だ本能寺にあり(190) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(68)【夏音譚(なつねたん)】「唄を口ずさめばよい。きっと唄(うた)い疲れた頃には全てが終わる」 この言葉で私でも解(わか)りました。
【小説】未だ本能寺にあり(189) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(67)【夏音譚(なつねたん)】「夏音」 又九郎(またくろう)様はさっと躰(からだ)に手を回すと、私を抱きながら廻縁(まわりえん)から飛び降りたのです。
【小説】未だ本能寺にあり(188) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(66)【夏音譚(なつねたん)】 小里(おり)は目下の者たちに、 ――あの小娘は何かを隠している。 などと虚言を弄し、私の命を奪わんとしている。
【小説】未だ本能寺にあり(187) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(65)【夏音譚(なつねたん)】「すでに御役目は果たせたのではないかな」 経典の間の仄暗(ほのぐら)さの中、又九郎(またくろう)様は少し頬を緩めました。
【小説】未だ本能寺にあり(186) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(64)【夏音(なつね)譚】 明智兵が二人、槍(やり)を向けて同時に突っ込んで来ました。又九郎(またくろう)様はそのうちの一本を刀で叩(たた)き落とし、残る片手で一本を鷲掴(わしづか)みに。
【小説】未だ本能寺にあり(185) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(63)【夏音(なつね)譚】「立て」 小里(おり)は耳元で凄(すご)みましたが、私は当然ながら聞く耳を持ちません。
【小説】未だ本能寺にあり(184) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(62)【夏音(なつね)譚】 改めて思いました。何故、小里(おり)はここまで執拗(しつよう)なのかと。私が持っていたこの棗(なつめ)がとくに貴重なものなのか。
【小説】未だ本能寺にあり(183) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(61)【夏音(なつね)譚】「おり殿、女には手出しをするなと命じられておろう!」 これはまた別の明智兵です。私は必死に走って振り返ってもいませんが、背後の男に駆け寄って制止したようです。
【小説】未だ本能寺にあり(182) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(60)【夏音(なつね)譚】 その男は、まずかなりの痩せぎすです。身丈も決して高くはありません。私とさえ然程(さほど)変わらぬほどに。
【小説】未だ本能寺にあり(181) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(59)【夏音(なつね)譚】 しかし、私が東に向かって逃げるにつれ、「あの建物はすでに確かめた」「床下まで探れ。
【小説】未だ本能寺にあり(180) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(58)【夏音(なつね)譚】 はい。駒井(こまい)様の仰せの通り、敢(あ)えて火を放ったのかもしれません。私たちが脱(ぬ)け出そうとしているこの時ですし、有り得ると思えます。
【小説】未だ本能寺にあり(179) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(57)【夏音(なつね)譚】 前にも申し上げた通り、私は明智の者たちを怨(うら)んでおります。しかし、その宿老の下知に救われたことは確かでございます。 まるで一つの生き物のようでございました。
【小説】未だ本能寺にあり(178) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(56)【夏音(なつね)譚】 春尾(はるお)という女房の御方がおられました。齢(よわい)三十ほどでしょうか。春尾様は私のすぐ近くの戸を開けられたのですが、恐怖から足が竦(すく)んでしまったのでしょ…
【小説】未だ本能寺にあり(177) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(55)【夏音(なつね)譚】 その時が近付いてきました。私が受け持ったのは七寸四方くらいの桐箱。邪魔になるからと外箱二つが打ち捨てられたものです。
【小説】未だ本能寺にあり(176) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(54)【夏音(なつね)譚】「私も」 私は恐ろしさに懸命に抗(あらが)いながら、前へと歩を進めましたが、「退(さ)がりなさい」 と、葛江(かずらえ)様は一蹴されたのでございます。
【小説】未だ本能寺にあり(175) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(53)【夏音(なつね)譚】「上様、一度お休みに」 森様が促すものの、上様は首を短く横に振り、「そのような猶予は無い」 と、お答えになりました。想像を絶する激痛だったことでしょう。
【小説】未だ本能寺にあり(174) 今村翔吾・作、木村浩之・画
四章 夏のひとり唄(52)【夏音(なつね)譚】 次の瞬間、鉄砲の音が。どどどど、といったように。一挺(ちょう)ではなく、何挺もの鉄砲が同時に撃たれたような音でございます。 それから暫(しばら)く後のこと。
- 1
- 2
動画